「杏、変わらねぇな。」
「え?」
正直、変わってると思ってた。
昔より、大人になったつもりだし、背も伸びたはずだ。
「不貞腐れる顔も。
照れる時に前髪に手が行く癖も。
笑った顔も。
泣いた時俯くのも。
…何も、変わらない。」
そう言った蓮斗の目が、笑顔が、声が、あまりにも優しかったので顔が赤くなる。
「れ、蓮斗こそ…っ!!」
私は恥ずかしくなって、反論する。
「起こって笑う時に目が笑わないのも。
呆れてる笑顔も。
少しフワフワした髪も。
寝る時、右に傾く癖も。
…何も、変わらないよ。」
私の顔はさっきより赤くなっているだろう。
心なしか、蓮斗の顔も赤い気がする。