「杏、だよな…?」

ようやっと働いてきた脳みそで思考を働かせる。


ここで、肯定しちゃったらダメだ。


直感的にそう感じて、首を横に振ることしか出来ない。


だって、そんなはずない。


私の事を杏と呼ぶ人はあの人しかいないもの。


お願い。やめて。


「覚えてない…?俺のこと。」

覚えてないはずがないじゃない。


やめてよ。嫌だ。想いが溢れそうになる。

この3年間、蓋をしっかりと閉めていたのに。


「わかんない…?俺だよ。」

ダメ。言っちゃ。お願い。言わないで。