第ニ章 山脇智子[ヤマワキ トモコ]
ジャーと蛇口から溢れる水の音が店内に響き渡る。
時刻はまだ朝の6時42分だ。
智子は、元々母親の経営していたこの喫茶店を
母が亡くなった今でも一人で経営していた。
毎月赤字の経営のなかで、従業員を雇うほどの余裕はなく、
一人でこなすのは大変ではあったが、
それでも智子は店を閉めるつもりはなかった。
店内の掃除を済ませ、看板を店前に立てる。
今日の日替わりは、智子の自慢の一品だ。
気分を弾ませ店内に戻ると、すべてのテーブルの
砂糖や、ナプキンなどの補充をした。
そうしているうちに、時刻はすでに7時30分を回っていた。
「よし、今日も頑張ろうっと。」