『リカコ、ポケットの中見せて?』


ベンチから何かを拾い上げてポケットに入れた現場を、あたしは偶然目撃していた。


あたしがそう尋ねると、リカコはあたしと目を合わせようとはせずに首を横に振った。


ポケットを握りしめる手が小刻みに震えている。


『返しなよ。できないなら、あたしが拾ったことにしてあげるから。ねっ?』


さとすように言うと、リカコはパッと顔を上げた。


『いや!!だって、あの子が悪いんだもん!!』


『どうして?』


『パパとママと一緒に買い物に行って買ってもらったってリカコに自慢したもん!!』


リカコの家は裕福だった。


公園にいるどのメンバーよりも。


リカコは、髪留めが欲しくて盗んだんじゃない。


両親と一緒に買い物に行ったと話す女の子が羨ましくて、髪留めをポケットに入れたんだ。