新しく出た機種が、聖人の使う携帯の通信会社とは違うものだった。
しかし聖人にとって、その新しい機種はとても魅力的だ。

聖人「じゃあこれにしよっかな。」
店員に声をかける。
店員「ありがとうございます。未成年の方ですと、親権者の同意書が必要になりますが、本日はお持ちでしょうか?」
聖人「あっ・・。」

聖人ははっと我に返る。そうだ、もう母さんが居ない。
今は親戚が援助してくれているんだ・・・。

聖人「すみません。忘れたので取りに帰ります。」

聖人はくるりと振り返り、下を向いて寂しそうにその場を去った。
ゼルエル「・・・・。」
ゼルエルは聖人に声をかけそびれた。
同意書ぐらいはなんとかしてやりたい気持ちだったが、今はそういう事が
問題ではないとゼルエルは考えた。

聖人「次はどうしよっか・・。」
????「聖人~!!」
遠くから女の子の声がする。
聖人の幼馴染みでクラスメイトの綾島 遥だった。
遥「一人でなにしてるん?」
遥は幼いころから近所に住んでいて、小中一緒の学校に通っていた。
昔はやんちゃだったが、今は髪も伸ばし、自分でアイロンをかけているのだろうか、
ストレートのさらさらの髪になっている。
顔も大人びてきているようだ。
そんな遥をまともに聖人は見れなかった。
聖人「いや・・別に・・・。」
遥「へぇ、でも奇遇だね。あたしも一人できたんよ。ね、一緒に買い物しようよ。」
聖人は遥の意外な提案に驚く。
聖人「えぇ・・・!!」
聖人は思わず間抜けな声を出してしまった。遥が・・。

でも聖人は考える。
ゼルエルが居るしな・・ゼルエルに行こうって言ったの俺だし・・。

ゼルエル「構いませんよ?」
にっこり微笑みながら話しかけてきた。

聖人「(でも・・・)」
ゼルエル「恥ずかしいのですか?しばらく離れてますので楽しんでいらっしゃい。
私はもともと案内されなくても分りますから。では・・・。」

そういってどこかに行ってしまった・・。
ゼルエルがそういうなら仕方ない。自分自身に言い聞かせる聖人。
聖人「ん、じゃ・・じゃあ行こうか。」
遥「うん。」
遥も満面の笑顔で応えた。

初めて女の子と2人で歩いている。
聖人はもう周りの風景や人が眼に入らない。