その日の夜、10歳年上の兄も休日出勤から帰って来て家族4人で食卓を囲んだ。
こうやって家族揃ってご飯を食べられるのは、あとどのくらいだろう。
「お前社長と結婚すんのか?」
兄が口を開いた。
「そうだけど」
「いいな〜社長。俺より5歳も下なのに、俺なんかより何倍も稼いでるんだろうな〜」
「まあそうだろうね」
「安月給の俺は日曜日だっていうのに、今日も仕事でしたよ〜。貧乏暇なしってやつだな」
「お兄ちゃんは?さゆりさんと結婚しないの?」
兄にはさゆりさんという、5年も付き合っている彼女がいる。
「そりゃしたいさ〜。ただ金がねえ!」
「さゆりさんも待ってると思うよ〜」
「だよなあ」
兄は眉毛をハの字にして、唐揚げを頬張った。
「つい最近まで彼氏いないって言ってたのに、いつから付き合ってたのよ?」
兄に代わって母が口を開いた。
「8月から」
「え!まだ5ヶ月しか経ってないじゃない!それであんたよく…」
「はいはいはいはい」
「ゆうじはさゆりちゃんと長いから結婚してもわかるけど、あんたは5ヶ月?何寝ぼけたこと言ってんのよ」
「お兄ちゃんと比べないでよ」
「大体あんたはまだ二十歳でしょ。早すぎるのよ」
母とはずっと衝突していた。
ケンのどこが気に入らないの?
いい人なのに。