「……時任さん」

「先生。実はそれまで一番玲織奈と仲良かったのは私でした」

「え?」


それに俺は目を見張る。
クラスの大半も知らなかったのか、少しだけ教室がざわついた。



「私、玲織奈と一緒の中学でしたから。
だけど、あの事件の後…私は玲織奈に前みたく話しかける事なんて出来なくて、裏切ったんです」

「……」

「一人でいる玲織奈を毎日見て、罪悪感で勝手に苦しんでた。
そんな想いを、私が絵美香につい、溢してしまったから」


そう言うと、時任さんは小島さんの方を向く。



「絵美香。ごめん。ありがとう。
でも、玲織奈が悪いんじゃないんだよ。
勝手に離れてった私が悪いんだよ」

「……泰子」

「だから、私からお願いします。
玲織奈と仲良くしてやってなんてムシのいい事は言わないから。
だから、追いだす様な事はしないで下さい」


時任さんは涙を浮かべて、深く頭を下げるとそう言った。