「誰の事を言ってるかわからないが、俺はそういった陰口みたいなのは嫌いだ。
皆には口がある。相手に伝える術がある。
なのに、誰かを蔑む様な行為は誰も幸せになんかなれない」


いつもより落としたトーンでそう言った。
誰もが俯き、言葉を発しようとはしていなかった。


だけど、小島さんだけは違っていた。


ゆっくりとその手を上げる。


「先生」

「何、小島さん」


カタって音を立て、静かに立ち上がると小島さんは口を開いた。


「小早川さんが、過去に起こした事件って知ってますか」

「……」


真っ直ぐに問われて、何も返せない。
それはどっちの事件の事なのだろうか。


俺は何も言わずに、彼女の言葉の続きを待つ。



「小早川さんは同級生を一人死なせてるんですよ」

「……」



“……私が、琥珀を殺した日”


思い出すのは、その言葉。