すっと顔を上げて、真っ直ぐに俺を見ると小島さんは再度。
「それは偽善だと思います」
そう言った。
「……偽善」
「だって、無駄にあいつにだけ優しくするのってそういうんじゃないんですか」
「……」
距離感。
それはいつの間にか、俺が思ってる以上に小早川に近付いていたらしい。
否、近付こうとしていたらしい。
そして、それは小島さんに気付かれてしまった。
「あ、はは。そうかもな。小島さん。
だけど、俺はどの生徒も大事だから。
だから、彼女が一人でいたら俺はやっぱり放っておけないよ。
もちろん、小島さんの事もね」
うまく笑えていたか、わからない。
でも、顔を俯かせた彼女は小声で「ごめんなさい」と言うとパタパタと走って俺の元から去って行った。
これじゃ、いけない。
小島さんは俺の事をよく見てたから気付いていたかもしれないけど。
もしも、他の生徒にまで勘付かれる様になったら。
……彼女に迷惑をかける。きっと。