「あーあ。朝は真っ青だったのにな」


少しだけがっかりしながら言うと、彼女は何もなかったかの様に俺の側から離れて行った。
もう俺の事は見なかった。


小早川がいなくなった後も、俺は暫くここから動けずにいた。


さっき、彼女が触れていた桜の幹に手を伸ばす。



“……私が、琥珀を殺した日”



俺はこの先を知ろうとしてもいいのか?
もっと、小早川に近付いてもいいのか?


知ってしまったら、きっと俺は小早川を一人になんてしない。


今もしたくないけど、小早川がこの距離感を求めるならそれを維持する様に努力する。


生徒一人に思い入れると、ダメだって頭ではわかってる。
痛いほどにわかってる。