殺してしまった、それにどんな意図があるのかはわからないけど。
でも、その罪に今も彼女は苛まれていて、きっとそれを今でも悔いている。
「先生ってキラキラしてる」
頬に手をあてたまま。
小早川がぽつりと言った。
「まるで、真っ白なキャンバスみたい。
どんな色でも鮮やかに魅せるの」
「……」
「先生、絵の具ってね。
凄いたくさんの色があるよね」
そう言うと、彼女が手を伸ばしたのは桜の幹だった。
静かに触れて、空を見上げた。
「けどね、そんな綺麗で鮮やかな色も黒が入ると、全てが塗り潰されちゃうの。
キラキラしてた、私の色達もたった一滴の黒の所為でさ」
クスクスと笑うと、彼女は少しだけ顔に笑みを乗せた。
そして、ちらっと俺を見る。
「その、黒は私なんだ」
さあっと風が吹く。
そして、彼女の黒髪を撫でて行く。
顔にかかった黒髪を手で整えながら、彼女はまた空を見上げた。
どんよりとした厚い雲で覆われている空。