あれから何度も季節は巡りまたあの、桜の季節がやって来た。
琥珀がいなくなった季節。
琥珀を殺してしまった季節。
ふっと桜の木を見上げて、私は琥珀を想った。
一人で毎日を過ごす私に、しつこく声をかけて来る人。
それが。
――――――――先生。あなたでした。
琥珀だけを想っていた私に、差し込んだ光。
どうしようもない暗闇の底で佇む私を、引きずり出そうと何度も先生は私を呼んでくれた。
要らなかったんだ。
必要なかったんだ。
だって、私には琥珀との想い出さえあればよかったから。
だから、他に何も要らなかった。
なのに。
先生は私を笑わせた。
笑ったのなんて、自分でももう思い出せないぐらい昔だ。