「琥珀さえいれば何も要らない」
「ん。玲織奈、大好きだよ」
ぎゅうっと私の手を強く握り締める琥珀。
優しい眼差しで私を見つめた後、校舎裏から見える桜の木を見上げる。
「……どうせなら桜が綺麗な季節がいいなあ」
「うん。琥珀好きだもんね」
「玲織奈も好きじゃん」
「琥珀の影響だよ」
「そっか」
「うん」
ふとした時に、琥珀が桜を見上げていたのを知ってるから。
一緒に見上げてたら、桜って綺麗なんだって気付かされたんだ。
私の全てが琥珀で回ってるって、琥珀は知ってる?
琥珀。
琥珀だけがいればいいってのは本当に、本心だよ?
信じてくれるかな。
それから、桜が綺麗な季節が巡って、私と琥珀は中学三年になった。
琥珀の両親が私を認めてくれる事はなかったし、相変わらず厳しい管理で琥珀は辛そうだった。
だけど、それが解放される。
その日だけを楽しみにして、待ち望んで、我慢したんだ。