「私は琥珀さえいれば何も要らないよ」

「俺もだよ、玲織奈」



ふっと、笑う琥珀の顔は見るからに疲れていた。
だけど。
別れたくなかった私は、それについて何も言わなかった。

言いたくなかった。


言ったら終わってしまうのをわかってたから。



そして、段々と琥珀が追い込まれていくのに。


私は何も出来なかった。


一番、近くにいた筈なのに。
……いた筈なのに。



「ねえ、玲織奈」

「ん?」

「……二人だけの世界に行かないか」

「え?」

「俺と玲織奈が認められないなら、認められる世界に行けばいいんだよ」

「……」

「俺は玲織奈と一緒なら、死ぬ事は怖くないよ」

「……琥珀」

「玲織奈は?」



そんなの、答えは一つだけだった。


琥珀の左耳に光る赤いピアス。
そして、私の右耳に光る赤いピアス。