「だって、そうでしょ?
琥珀は私を愛したまま、私だけを愛したまま、この世から去ったの。
これからもしかしたら私以上にいい人がいたかもしれない。
それを摘んでしまったんだ、私は。
それなら、私はこの命が尽きるまで琥珀だけを愛して行かないとって」



視線を伏せると、小早川は握り締める手に力を込める。
その手は微かに震えていた。



「最初は、小さな笑いだった。
先生が笑わせてくれた時、ぽっと何かが灯った様なそんな感じだった。
次第にそれは私の中で膨らんでって、キラキラと色付きだしたの」

「……」

「どうして、どうして、誰が、誰が。
こんな裏切りを許せるの。
琥珀だけを愛していたかったんだよ、先生。
それは揺るぎないモノでありたかったんだよ。先生。
どうして、先生、私と出逢ったの。私の前に姿を現してしまったの」



もう、抑え切れなくて。
自分の中の衝動を抑え切るなんて出来なくて。


奥歯を噛み締めながら、小早川の手を引くと自分の胸へと引き寄せる。
すっぽりと俺の腕の中に収まった彼女は尚も続けた。