「こっちだと小早川の事件を知ってる人が多いだろ?
誰も何も知らない環境に行けば、小早川も友達が出来るんじゃないかなってさ」

「……」

「一言、小早川に伝える事が出来たら良かったのに。
人間には言葉があるのにな。本当に。
小早川も不器用だったんだよ。
自分から離れれば、誰も傷付かない。周りも、自分も。
そう思ったんだろ?」

「……」



ぎゅっと下唇を噛んだ小早川は俺から視線を逸らすと、俯く。
触れたのは手首。
何度も切ってしまった、そこ。



「だから、もう小早川は大丈夫。
一人じゃないよ。な?」

「……」



ニカっと歯を見せて笑った。
ぎゅうっと手首を握る手に力を入れた小早川。


その後、暫く黙っていた小早川はスッと手首を掴んでいた腕を耳元へと伸ばした。


琥珀君との懺悔の証の赤いピアス。
彼がくれた、大切な想い出の品。



触れるだけ、そう思ってた俺は次の小早川の行動に目を見張った。