そうやって、小早川の事を教えてくれたのは宇津木先生だった。
職員室を飛び出して、俺はあの場所へと向かう。
人気のない、プール裏にある桜の木の下。
やっぱりここに彼女はいた。
ずっとこの場所には訪れてなかったのに。
木の幹に触れて、小早川は生い茂る緑葉を見上げている。
木々の間から漏れる太陽の光が、彼女の髪の毛を照らした。
スカートから伸びる白くて細い足。
相変わらず無表情で何を考えてのるかわからない。
「小早川」
そう、声をかけると彼女は幹に当てた手をぴくりと動かした。
「帰ったって思ってたよ。いてよかった」
あははって笑いながら、俺は一歩ずつ近寄って行く。
小早川がこっちを見る事はない。