「彼女が行ってしまって、一番もっと何か出来たって後悔しそうなのは早乙女先生じゃないかなって」
「……」
「違ったかしら?」
「……」
小早川に出来る事?
俺は今、出来る事を全てやった。
……そう、思ってるだけなのか?
「……行って来ます」
「え」
「小早川探して来ます」
「そうね、最後に一番話したい筈よ」
コクリと頷くと、俺は椅子から立ち上がる。
宇津木先生の横をすり抜けて、一歩進んだ時ぴたりと足を止めた。
それから、顔だけ振り向かせると一言。
「彼女の笑窪、ちゃんと見る事出来ました」
「そう」
一瞬、キョトンとした宇津木先生だったけど、すぐに目を細めて笑った。