「……お願いします」
涙声で、震えていたけど。
だけど、その想いはちゃんと皆に伝わったと思うよ。
「そういう事だ。誰か一人を追い詰める様な事はしない様に。
何かあったら先生に報告して下さい」
そう言って、俺はホームルームを終わらせた。
教室から出てすぐに、時任さんが俺を呼び止める。
「早乙女先生」
足を止めて時任さんを見ると、その後ろには顔を俯かせた小島さんの姿もあった。
「ありがとうございます。玲織奈に話しかけてくれて」
「いや、俺の方こそありがとう。さっきの時任さんの言葉を皆も受け止めてくれたと思うし」
「ううん。誰も玲織奈に話しかけようとはしてくれなかったから。
だから、玲織奈にも分け隔てなく挨拶する先生を見ていつも感謝してました」
「……」
「…あ、あの」
時任さんに微笑むと、後ろにいた小島さんが俯かせた顔を少しだけ上げて俺に声をかけた。
いつも自信満々な彼女なのに、さっきの事を気にしてるのか、少しだけ頼りない。
「私…小早川さんにヤキモチ妬いてました。
何もしてないのに構われてる姿がムカついて…、泰子の話聞いてあんな事」
それから、「ごめんなさい」と頭を下げて謝る小島さん。