それは決してドラマのような出会いじゃない

場所はうるさい居酒屋だし、私達の間には酔っ払った男がいた

「普段はあんなんじゃないんだ、許してやって」

男を二人がかりで座敷に横にすると、彼はそう言って笑った。


ーーかっこいい人だった


人を射ぬく強さを持った大きな瞳

その瞳は、感情を隠してしまうような不思議な光を放っていて

まるでその光を隠そうとするようにように

瞳には柔らかな優しさが浮かんでいた


きちんと整えられた髪に、しっかりと鍛えられた身体

その全てが彼を美しくさせていた


「一年の子?」

心地よく鼓膜を揺らす穏かな声

「あ、はい・・・」

私を見つめるその瞳があまりにも優しくて

思わず視線を少し下に落とした。

「そっか、俺は三年の長島梢」

長島、梢・・・

心の中でそっと、その名前を繰り返した。


「おーい、かりーん」

少し離れた席にいた茜が大きな声で私を呼んだ。

その声に長島と名乗った彼も、茜の方へ視線を向けた。

翔「かりんって?」

再び向けられた瞳が優しく僕を見る。

「あ、いえ、大宮可鈴だから可鈴って呼ばれてて・・・」

「へー・・・いい名前だ」

「え・・・?」


思いもしなかった言葉に驚いて彼を見ると

彼はもう私に半分背中を向けて


「じゃあね、可鈴ちゃん」


そう言って、ただただ優しく微笑んだ


ーーそれは平凡な出会い


平凡な挨拶


平凡な先輩と後輩の会話


・・・だけど


その全てが、私にとっては『特別』に感じられた