『可鈴』

 
ーー懐かしい、声


『可鈴、寒くない?』

 
『平気!』


『可鈴、手』


『ん?』


『手をつなごう、可鈴』


 
ーー何度も何度も、私の名前を呼ぶ人だった

その声が心地よくて

私はいつも、その声に寄り添っていた。


 
『可鈴、本当に寒くない?』


『うん、大丈夫!』


『そっか・・・』


ーーあなたの温かい手が、そっと僕の手を離した


『梢・・・?』


ーー急に離された手が寒くて、私はあなたに手を伸ばした

 
ーーその手を、あなたは悲しそうに見つめて首を横に振った


 

『可鈴・・・』


 
ーーそしてあなたは、いつもと同じ穏かな声で


 
『さよならだよーー・・・』


 
ーー終わりの言葉を、私に告げた


 


ーーその時、あなたの頬を滑り落ちた一粒の雫を


・・・今もまだ、覚えている