急に大狼君の話し声が止まる。
「……え、ここで終わり?!」
残念そうに聞く木戸先輩。
「今残ってるのはここまでなんですよ!」
待って、頭の中整理しよ……。
この2人はそれぞれ、
オオカミ男とバンパイアで……
同じ女性に恋をして……?
「……えええ?!」
「な、菜美?!」
大声で叫んでしまった。
えっと、えっと?!
「あ、言い伝えだから、本当になるかは分かんないけどね?」
なんとなくニヤニヤとしながら言う木戸先輩。
「は、はい…。」
「本当だったら、俺らが菜美の事好きになるって事だよな…。」
何かを考えているかのようにゆっくりと呟く。
「ま、言い伝えだから無いか!」
「で、ですよね!無いですよね!」
うん、無いと思う…!
それに、温もりも、美しい血も無いし!
「あ、じゃあまた明日な!」
「う、うん!じゃあね、大狼君!」
おう、と言って部屋に入っていく大狼君。
それを見てるだけで心がホッとして、ポカポカする。
やっぱりこれは………。
「で、菜美ちゃん何かあったよね?」
「な、な、無いです!」
そういえば、木戸先輩が居たんだった。
本当勘がいい………。
「晃太の事、好きになっちゃったんだ?」
「……ちっ、ち、違います!」
「じゃあ何でそんなに動揺してんのー?」
「し、してないです!」
「好きなら、応援するから!」
「違いますってばっ!」
急いで家に飛び込む。
もうしないって思ってたのに……
男の子と関わらないようにしようって……
あぁ……。
……違う……絶対違うけど……
“好き”
なのかも、しれない……。