『最終下校の時間です、まだ校内にいる生徒のみなさんはー……』
あ、もう最終下校か!
カバンを持って部室を出ようとすると、
「菜美ちゃーん、一緒に帰ろっ!」
友達の好きな人とウワサになりたくない。
というか、誰ともウワサになりたくない。
「イヤです、さよなら!」
ドアを勢いよく閉めて学校を出る。
意外と、外は真っ暗。
黄色い月だけがアクセントになってる。
あ、今日の月は欠けてる…
そんなことを考えながらアパートの階段をタンタンと登っていく。
カバンの中を漁ってカギを探す。
………あれ。
…………んん?!
カギが……無いっ!
落としちゃったかな……。
短い学校までの帰り道を辿る。
………やっぱり無い……。
学校で落とした?
そこまで戻る?
実梨の家まで行って泊めてもらう?
迷惑だよね………。
大家さんがカギ持ってるっけ………?
あ、旅行行くって言ってたな……。
大狼君か木戸先輩にお願いして入れてもらう?
………絶対ヤダ。
学校に入って探す?
………真っ暗ヤダ。
でも、そうしないと………今日は……。
とりあえず、先生ぐらいいるかな…?
門をこっそり開けて職員室を覗いてみる。
………誰もいない。
あぁ………どうしよ……。
「菜美………だよな?」
うずくまっていると、後ろから声がした。