「あ、来ましたよ」



「菜美ちゃん、花井さん!」




元気よく先輩は手を振っている。




「あの、遅くなってごめんなさい!」



ペコリとおじきをしていると




「………帰るんですよね、さよなら……」




寂しそうに笑った後、私の目の前を通り過ぎて行く実梨。



………なんで、そんなに怒ってんの……?!




「み、実梨っ!」




「………なに…」




冷たい瞳が私を睨む。



………実梨は…こんな事しない。




いや、したことがない。




ケンカもしたことがなくて。





だから、今、実梨はすごく怒ってるんだ。





「私……何した…?」





原因が私なら、直す。



私が、どうにかしたい。





「…………別に…」




………もう…!




「ねぇ、私が何した?!怒らせた?!」




「……菜美には関係ない…!」




「ちょっと、2人ともやめなって…」




「………菜美は…いいよね……」




止めに入る木戸先輩を見向きもしないで、冷たく言い放った。




「え?」




いいよね?



何が? 




「………もういい」




私から目を逸らして、足を進める。




「理由ぐらい教えてくれたって……!」




実梨の腕を掴んで言った。





「……フられたの!!」




涙をボロボロとこぼしながら、私を憎むように見た。




「え…………。」
 




「しかも、その人の好きな人が……っ!」





「花井さん」




木戸先輩が実梨の前に立っていた。




「………もう聞かないで…!」





実梨は走り出してしまった。





「………待ってよ…!」




「ほっときなよ、大丈夫だって。」




追いかけようとした私を、大狼君が止める。



止めないでよ……





「…………実梨……フられたって………」





震えた声で、木戸先輩を見た。




「………うん、フった」




なんだか、先輩の表情は見えなくて……。




「先輩っ、可愛いって言ったじゃないですか……っ!」




前、言った。




実梨の事、可愛いって。





「可愛いと好きは違うんだよ……。」




ゆっくりと先輩は足を前へと進めていく。



それに、



行こう、というように大狼君が私の肩をトントンと叩いた。




苦しくて辛い友達を、励ませなくて




励ますよりも、余計に泣かせて






私………








自分が嫌になってくよ………。