「わー、今日ハンバーグ?」
「ふ、不法侵入っ!」
「あ。これ彼氏ー?」
私の話を遮りながら、玄関にあるスニーカーを指してニヤニヤしている。
「はぁ?!」
「おじゃましまーす」
どんどんと部屋に入っていこうとする。
どうも会話が成り立たないらしい。
「この………バンパイ……ッ!」
ダァン………!
なぜか壁に押しつけられている私。
「は、離してくださいっ!」
「やだ」
「不法侵入バンパ……ッ!」
“不法侵入バンパイア”と言いかけたとき…
「黙って?」
いつの間にか伸びていた八重歯……
いや、牙というべきか。
牙が首筋にめり込みそうになっている。
これは……
「は……い……」
黙らざるを得ない。
「……人にバンパイアってバレちゃいけないんだよね」
ああ、そうですか。
………人に……?
まさか、私って人じゃないみたいな?!
「あ、菜美ちゃんは人だよ?」
ああ、良かった。
………じゃなくて、心読まれてる感じ?!
「満月の日は心読めんの。」
ああ、そうなんですねー。
ってことは、変質者とか分かってた?!
ていうか、分かってて入ってくるの?!
しかも、黙る必要ないでしょ?!
「だから、言ったら吸血するから」
………決めゼリフだと思ってんのかな。
「って事だから!」
ふつうの八重歯に戻っていく。
そして、普通に私の部屋に入っていく。
………やっぱり、不法侵入じゃん!!