そのとき。




「修治さん。楓。」

二人の後ろから低い声が降ってきた。

二人が振り返る。

そこには、長い金髪をセットして腰パンにピアスやアクセをジャラジャラさせた「ただのヤンキー」が立っていた。

二人の間から彼が割って入ってくる。

彼は無言で私の手首を掴んで引っ張り出した。

「えっ、ちょっ…!!」





私はわかっていた。

この人が誰なのか。

だから怖がりはしなかったけど、ただただ驚いていた。

「こいつ、俺の知り合いなんで」

私の肩を寄せるように掴んで、二人に向かって彼が言う。

「…ちょッ…!!」

不意に肩を寄せられ、私は驚いて彼を見上げた。

「柊斗…」

藤原柊斗。

彼の名はそうだった。

「結愛、わりぃ」

柊斗はそれを言うと手を離し、じゃっ、と軽く手を振って修治さんとか楓さんとかやらと裏路地に消えていった。

「…あっ」

こっちにお礼さえ言わせる隙も作らず。



脳内に柊斗の顔がリピートする。

あんなに間近で柊斗の顔を見たのは相当久しぶりな気がする。

昔の柊斗の面影はまだ消えていなかった。


私は歩き出した。




時計を見る。










あと1分…







走り出す。