…やばい。

私は無意識のうちにそう呟いていた。

すぐ目の前には、金髪混じりのオールバックで腰パン煙草の大人と、金髪ストレートに派手色のスウェットを来た女子、よくこの地域の裏通りを徘徊してるいわゆる「ヤンキー」。

こんなのがいることくらいは知ってたけど…

「お前どこみて歩いとんじゃゴラ!?」

ドラマでよく聞くお決まりの台詞だって目の前にしたら何も言えなくなる。

私はただただ怯えていることしかできなくて、立ち尽くしていた。

二人が近づいてくる。

私は後ずさる。

「なんか言えよ」

低音ボイスを響かせて、オールバックの隣にいる金髪さんが睨んでくる。

「えっ…あっ…」

心臓に押しつぶされて、声が出てこない。

周りをそっと見てみても、人影は見えなかった。

もはや逃げられない。

女子の方が一歩前に出る。

もはや後ずさることすら忘れていた。

いつの間にか二人に囲まれたみたいになっている。

「お前、西高じゃん」

彼女は私の制服を眺めた。

フッと鼻で笑う。

「ねぇ、西高って私立だよね?金持ち?」
彼女はそう聞いた。

嫌な予感がする。

彼女は真顔に戻って、キツイ目で睨みつけながら

「金出せ」

それだけ言い放った。

「持ってんでしょ」





嘘でしょ…

追い詰められて逃げられない。

ここでお金を渡してしまえば終わるのかもしれない。

でも、そんなこと…

「も、持ってません…ッ…!!」

喉の奥から絞り出した声は二人に届いたようだった。

「は?」
でもそんな嘘など、通用する訳が無い。

彼女が胸の前で拳を握り締めて指の関節を鳴らした。




目を閉じる。






終わった…