それから1年の月日が過ぎていった。










「京輔ぇっ!絶対に俺、お前のこと忘れないからなぁっ!」




「大げさだろー」




卒業式が終わった俺らは、教室で別れを惜しんでいた。




この中学へ通うのももう終わり…




そう思うとすごく切なくなった。




皆帰った後、俺は最後まで一人、教室に残っていた。











俺は、高校ではこの土地を離れる。




友達とも…誰とも一緒じゃなくなるだろう。





もちろん…未風、とも。




「…帰るか。」




俺は思い出溢れる教室をようやく出た。











そんな時だった。




「あ、あれは…!!」




下駄箱に入っていたのは…




しばらくぶりの未風の小説だった。




下駄箱には未風の姿はなく、ただ小説だけが残されていた。







手に取ってみるとずっしりと重みを感じた。




今まで一番分厚く、重かった。




俺は家に帰って見るまでの時間が惜しく、下駄箱に腰を下ろした。






題名は…『君と過ごした日々』。







未風の得意の恋愛小説だ。




いつもより読むのに時間がかかった。




だが…やめられなかった。







最後、この主要人物である二人は…




想い合っているのに、進路の違いで離れ離れになってしまう。





涙なしじゃ読めない感動の物語だった。





…そして。





俺は最後の1ページをめくった。




そこにはいつもの最後の未風のメッセージはなかった。













書き忘れかとも思ったりした。



でも。






「っ…!!」





しばらく考えて…俺はようやく気づいたのだ。





未風にはもうメッセージなんて必要なかったことが。






「未風…っ」










…この小説の全てが彼女のメッセージだったのだ。






そして、俺は…遅かった。











儚い、未風の想いに気づくのが。