俺、が…彼女に出会ったのは。



今から5年前のことだった。




「何書いてんの~?」




「うわっ、君への想いが募って…って恋愛小説じゃん。」




彼女…未風は休み時間、いつもそうして女子達に小説を読まれていた。



バカにされ…笑われ。




それでも彼女はじっと我慢していた。








「京輔~帰ろうぜ。」




「ああ。」





だが俺はただそんな彼女の姿を見てるだけで…会話を交わすことはなかった。








そんな彼女と初めて話したのは…中1の冬のことだった。




「やべ。教室に手袋忘れた。」




「何してんだよ~京輔。」




「悪い。先帰ってていいぜ。」





俺はそう友達に言い急いで教室に戻った。




教室のドアを開けると、中には…未風がいた。




でもどうやら書き物に集中してるようで…





俺の存在には気づいてないようだった。





俺は邪魔しないようにそっと手袋をとった。




そんな時だった。








ふいに目の端に写った未風の顔が緩んだのだ。





ハッとして見ると…





未風は小説を見て綺麗に微笑んでいたのだった。




優しい、笑顔で。





俺はそんな未風の笑顔に心惹かれて。









「……なぁ。」




そう、とっさに声をかけてしまった。




未風はびくっとして俺を見つめた。





「それ…読ませてくれないか?」





俺が初めて未風の笑顔を見て、初めて彼女と話した時だった。