「行くぞ」


私を待っててくれたのだろうか。

望みなんてないのに、期待を持ってしまう私。


好きな人なんて、わかっているのに。



「急げ、でないと遅刻する」

「ええ、でもヒールだし」

「馬鹿、どーしてヒールなんだよ」

「だってえ…」


それは、好きな人に少しでも可愛く見てもらいたいからじゃん。


喉まで出かかった言葉を飲み込む。



普段よりも女の子っぽい格好をした私。
シフォンのスカートに、オフショルダーのトップス。
髪の毛も緩く巻いてみたりして。


……でも、きっと梨々子の可愛さには勝てないんだろうな。