「ちょっとお待ち下さいっ!」



ドアの向こうから聞こえてきたのは、浅雛達のいる部屋まで届く大きな声。



「何事かしら?」



尋常では無い雰囲気に、假躍の顔が強張る。


男女が言い争う声。

制止しているのは女の方で、口調から警察職員のようだ。



「私見てきます。」


「待て。小鳥遊、お前が行け。」



名乗りを上げた浅雛に、仇夂は小鳥遊を行かせようとする。



「なんで俺なんですか?」


「こういう時は男が行くもんだろ。」



「そういうの、女尊男卑って言うんですよ。」



文句を言いながらもドアへ向かうあたりが、仇夂に対して天の邪鬼な小鳥遊らしい。



「あ、あの!そこはっ!」



「うぉっ!?」



ドアノブに手を伸ばそうとした瞬間ドアが開き、迫るドアに小鳥遊は驚く。


日頃より鍛えている反射神経で飛び退いたので、ぶつかるのはなんとか防げた。



閉じ込められないようにと、防犯上の理由から内開きドアを採用しているが、こういう場面では厄介極まりない。