「そんなことって……。犯人逮捕は勿論重要だ。重要、だけど…俺にとってはそれと同じくらい、いやそれ以上に……」



浅雛の言い方はまるで他人事。


渦中の中心人物で被害をモロに受けているにも関わらず、全く堪えている様子が無い。


無言を貫いて時間の経過を待ち、差し出される手さえ見えないかの様に看過し、少しの挑発で相手から離れるように仕向ける。


高校時代と変わらない。

浅雛も。

自分も。


小鳥遊の頭の中で重なるのは、過去と現在。

忘れることの出来なかった、姿と想い。



「俺はまだ、お前のことが」


「小鳥遊。その答えも変わらない。何度言われてもあの時と同じだから。」


「浅雛……」



突き放すようにそう言って階段を降りていく浅雛。



「くそっ……………」



強く握り締めた拳で真横の壁を力任せに叩くも、軽い音が鳴り単に非力さが証明されただけ。



良く知ったデジャブだった。