「浅雛。」



帰ろうと部屋を出て階段に差し掛かった浅雛を呼び止めたのは、假躍と厠餉乘の会話の間、全く言葉を発しなかった小鳥遊だった。



「何?」



「あ…いや…」


「?用が無いなら帰るけど?」



捜査の件かと思い話を聞こうとした瞬間しどろもどろになる小鳥遊に、呼び止められた理由が分からず浅雛は首をかしげる。



「……あの……悪かった。まだ冷宝に振り回されてたなんて知らなくて……」


「別に。あの時も言ったけど、小鳥遊が気にすることじゃない。」



あの時……2人が同級生だった高校生の時のことだ。

薙晶の横暴を見かねた小鳥遊が、止めるよう直接薙晶に言ったことがあった。


けれど、それを知った浅雛に言われたのだ。



いきなり謝罪されても動じることなく返答する。

表情を変えず、何とも思わないような今と同じセリフ・同じ顔で。



「そんなことより、犯人の手掛かり掴まないと。刑事部長にまで圧力かかってるなら、見つからないじゃ済まされないし。」



今の状態では捜査に何らかの進展が無いと假躍の責任問題になる。


浅雛はそれを危惧していた。