「確かに、私と薙晶様は古くからの知り合いです。私の父が清憲様の会社の下請けの工場で働いていました。しかし、」



20年前、浅雛の父と母―――

浅雛蝓兵(アサヒナ ユウヘイ)と浅雛郁榎(アサヒナ フミエ)は、事故により死亡した。


親戚もおらず一度に家族を失った浅雛を不憫に思った薙晶が清憲に頼んで、高校卒業まで同じ家で過ごしていた。



「良い人達じゃないか。何で浅雛が妬んでるってことになるんだよ?」



我黏の疑問は最もだ。



「同じ年齢だったので、私は薙晶様専属のメイドということになりました。言うなれば、僕か奴隷といったところです。」


「僕か奴隷って…。それは言い過ぎだろう。専属メイドつっても、同い年だろ?そこまで…」


「それは事実ですよ。」



我黏の疑問に答えたのは、浅雛ではなく小鳥遊だった。



「やっぱりお前、知り合いか。」


「高校の同級生ですよ。」



浅雛は、高校を卒業してすぐ警察官試験を受けたノンキャリア。


大学出の小鳥遊と、経歴上接点が無いのは当たり前だった。