「小鳥遊、お前こちらのお嬢さんと面識があるのか?」


「それは……」



厠餉乘の問い掛けに、小鳥遊は目を泳がせ言い淀む。


少し俯いたその顔は、今まで見たことがないぐらい辛く悲しげに歪んでいる。



「薙晶様の件に、私は一切関わっておりません。」



清憲が薙晶を突き落とされたと言った瞬間目を見開いたが、それ以降は黙ったままだった浅雛が口を開く。



「よくもまあ、平然と言えますこと。」


「そこまでお疑いならば、当然証拠などはおありなのですね?それを拝見出来ますか?」



「なんですって!」



淡々としているが、出てくる言葉は曝を逆撫でするものばかり。



「貴様自体が証拠だ!この疫病神が!」


「旦那様、奥様。落ち着いて下さい。」



「神に例えて頂けるとは光栄ですね。」


「あ、浅雛!」



口数は少ないが相手の事を考え、言葉を選んで言っているように見受けられる普段とは明らかに違う刺々しいこの言動。


そんな浅雛に、さすがの厠餉乘も制止する声に戸惑いの色を隠せない。