それから一か月、一生懸命バイトしたんだよ。

授業も、休まなかった。

春次郎さんと約束したから。


そして、一か月たったある日、私は特急列車に乗っていつもの駅に向かった。

もう一度、春次郎さんに会うために。


駅から、この間、春次郎さんを待ち続けたエスカレーターの下を抜ける。

切ない思い出が胸に蘇ってきて、泣きそうになるけれど。

それでも私は、泣かなかった。

泣いたら、春次郎さんにもっとよくないことが起こる気がして。


当てがあったわけじゃない。

私は、微かな記憶を頼りに、春次郎さんの家を目指した。

11月のライブの後に、打ち上げをするために向かった春次郎さんの家。

結局、家を飛び出してしまった、苦い思い出がある。


あの日は、真っ暗だったし、みんなについて行ったから。

土地勘のない私には、ちっとも分からない。

だけど、いつも手紙の裏に書いてある住所を頼りに、春次郎さんのアパートを探した。

電信柱に書いてある番地を確認したり、道行く人に尋ねたり。

一生懸命探した。

きっと、きっとそこに、春次郎さんにつながる手がかりがあると信じて―――