その日は、いつにも増して観客が大勢いた。
私はカウンター席に一人で、じっと春次郎さんを見つめていたんだ。
前よりも、さらに痩せたような面影。
まだ、具合が悪いのだろうか。
今日も、薬を飲んで無理してステージに立っているのだろうか。
考えれば考えるほど、不安な気持ちになってくる。
彼らは、今月のステージは特別に、クリスマスソングの演奏をしていた。
春次郎さんの美しい音色。
ジングル・ベル、きよしこの夜、そして、ラスト・クリスマスなどなど。
そして、最後に演奏したのは、何故か山下達郎のクリスマス・イブだった。
その歌詞を思い出したら、春次郎さんの切ないサックスの音色と重なって、切なさがあふれ出す。
心深く秘めた想い
叶えられそうもない
必ず今夜なら
言えそうな気がした……
まだ消え残る君への想い
夜へと降り続く
街角にはクリスマス・ツリー
銀色のきらめき……
春次郎さん、好きです。
消えてしまいそうなあなたが、好きです。
この想いを、伝えたい。
叶わなくても、それでもいい。
伝えたいよ、この口で、私の言葉で。
ライブが終わった瞬間、私は誰より早く立ち上がった。
春次郎さんに駆け寄って。
もう、何も見えなかった。
春次郎さん以外、何も―――
「連れてって。」
「すみれ!」
「連れてってよ。本物の星空を見せて。春次郎さん!」
零れる涙。
私に、こんなに強い感情があったなんて、知らなかった。
涙が、後から後からあふれ出して、止まらなかった。
自分がどうして泣いているのか、わからない。
だけど、もう二度と、春次郎さんに背を向けたくない。
この気持ちは、誰かと比べなくていい。
一緒に過ごす時間の差で、悲しくなんてならなくていい。
私は、私なんだから。
私は、どう頑張っても円花さんにはなれない。
だから―――
春次郎さんは無言で頷くと、私の手を強く引いて、バーを出て行った。
ドアが閉まる瞬間の、円花さんの泣きそうな顔を。
私は振り切るようにして、春次郎さんについて行ったんだ―――
私はカウンター席に一人で、じっと春次郎さんを見つめていたんだ。
前よりも、さらに痩せたような面影。
まだ、具合が悪いのだろうか。
今日も、薬を飲んで無理してステージに立っているのだろうか。
考えれば考えるほど、不安な気持ちになってくる。
彼らは、今月のステージは特別に、クリスマスソングの演奏をしていた。
春次郎さんの美しい音色。
ジングル・ベル、きよしこの夜、そして、ラスト・クリスマスなどなど。
そして、最後に演奏したのは、何故か山下達郎のクリスマス・イブだった。
その歌詞を思い出したら、春次郎さんの切ないサックスの音色と重なって、切なさがあふれ出す。
心深く秘めた想い
叶えられそうもない
必ず今夜なら
言えそうな気がした……
まだ消え残る君への想い
夜へと降り続く
街角にはクリスマス・ツリー
銀色のきらめき……
春次郎さん、好きです。
消えてしまいそうなあなたが、好きです。
この想いを、伝えたい。
叶わなくても、それでもいい。
伝えたいよ、この口で、私の言葉で。
ライブが終わった瞬間、私は誰より早く立ち上がった。
春次郎さんに駆け寄って。
もう、何も見えなかった。
春次郎さん以外、何も―――
「連れてって。」
「すみれ!」
「連れてってよ。本物の星空を見せて。春次郎さん!」
零れる涙。
私に、こんなに強い感情があったなんて、知らなかった。
涙が、後から後からあふれ出して、止まらなかった。
自分がどうして泣いているのか、わからない。
だけど、もう二度と、春次郎さんに背を向けたくない。
この気持ちは、誰かと比べなくていい。
一緒に過ごす時間の差で、悲しくなんてならなくていい。
私は、私なんだから。
私は、どう頑張っても円花さんにはなれない。
だから―――
春次郎さんは無言で頷くと、私の手を強く引いて、バーを出て行った。
ドアが閉まる瞬間の、円花さんの泣きそうな顔を。
私は振り切るようにして、春次郎さんについて行ったんだ―――