そして、季節は流れ。

あれから一か月が過ぎようとしていた。

春次郎さんから、手紙が来ることはなかった。

そして私も、何度も書いたけど、出せなかった。


春次郎さんのちょとした言葉に、勝手に傷付いて、勝手に帰ってきたのは私。

だから、手紙を出して謝ろうにも、恰好がつかなかったんだ。


でも、バイトだけは続けていた。

また、S県に行けるだけのお金は貯まっている。

このまま何もしなければ、何もなかったことになる。

それは、分かってる。


そんなある日、あっさりした白い封筒が、ポストに入っていた。



「え、」



高梨春次郎―――



もう、私のことなんて忘れてしまったと思ってた。

それなのに、こうして手紙が届いた。

だけど、きっと春次郎さんは怒ってる。

どんな中身か怖くて、私はなかなか開けられなかった。





すみれへ


この間は、ごめん。

嫌な思いをさせたね。

一人で帰してしまって、本当に申し訳なかった。

追いかけたけど、君は逃げ足が速いものだから、見つからなかったよ。

ずっと手紙を送らなかったのも、ごめん。

意地悪じゃないよ。

ちょっと、体調が悪くて。


すみれに言われたから、病院に行ったよ。

近くの個人病院なんだけど、風邪だろうって。

薬を貰って帰ってきたんだ。

だけど、その薬が効かなくてさ……。

やっかいだな、ほんとに。


自分の話ばっかりでごめん。

あーもう、ほんとに僕はバカだ。

打ち上げなんて行かずに、君と一緒に過ごせばよかった。

すみれは、頑張って働いて、せっかく会いに来てくれたのに。

君の気持ちを台無しにするようなことをして、ほんとにごめん。


もし、もしも許してくれるなら。

僕にもう一度チャンスを与えてほしいんだ。

来週の土曜日、すみれの誕生日だよね。

その日に、ちょうどクリスマスライブを開くんだよ。

もしよかったら、来てほしい。

今度はきっと、寂しい思いなんてさせないから。


待ってます。



春次郎