サックスの動画を検索していたら、「ルパン三世のテーマ」という文字が目についた。

これなら、知ってる。

中学生のとき、みんなで吹いたっけ。

あのときも、サックスの先輩がソロを吹いて、かっこよかったんだ。


何となく気になってクリックすると、すぐにその動画は始まった。


背景にお洒落な世界地図が貼ってある、薄暗い部屋。

そこに、華奢な男性が映る。

といっても、顔は映さないようにしていて、首から下なんだけど。

男性は、首から下げたストラップで、キラキラ光るアルトサックスを支えている。


伴奏としてかけたCDが始まるとすぐに、その人はサックスを吹いた。

最初のフレーズだけで、ただ者ではないと感じた。

なめらかに動き回る指。

安定した高音。

色っぽいビブラート。


自由自在に楽器を操る彼に、私は釘付けになった。

楽器を吹く人を見て、こんなに心を奪われたのは初めてかもしれない―――


彼は、とても軽快にサックスを演奏する。

私が今まで聞いた「ルパン三世のテーマ」の中で、ダントツの軽快さだ。

まるで、うさぎが飛び跳ねているみたいな音。

それでいて、深みのある響き―――


私は、何度も何度もその動画を見返した。

そして、コメントからその動画を撮ったとき、彼は高校生だったことを知る。


高校生のとき、こんなにうまかったんだ。

それなら今は、もっと上達しているのだろうか。


なんだかわくわくして、時間を忘れて動画を探していると、同一の人物がいくつも動画をアップしていることがわかった。

私は、そのすべての動画を見て、その音色に聞きほれた。

こんなの、初めてだった。


しかも、彼は私より一歳年上の大学生であることが分かった。

私の街からは、頻繁に行くには遠いところに住んでいるということも。

彼が、大学生活の傍ら、アマチュアの演奏家として活躍していることも知った。


一目惚れ、というものがあるなら。

私は、一聴き惚れ、とでもいうのだろうか。


その日私は、いつか彼の生の演奏を聴くんだと、心に誓ったんだ―――