「………」
ハクは店のカウンターに立ち、
何かを作り始めた。
ジューっと音を立てて
美味しそうな香りが漂ってくる。
「まゆは目玉焼きはソースと醤油どっち派だ?」
「うーんと、醤油!」
「了解。」
わたしは自分の左腕に巻かれた包帯を眺めた。
小さい頃保健の先生にやってもらったみたいに、丁寧に巻かれてある。
「………」
次に店内を見渡すと、レトロな雰囲気漂う店の角に、いろんな昔の難しそうな本が並べられている場所があった。
痛む足を引きずりながらその本棚の前に座り込む。
わたしが読むには程遠いような
難しそうな本ばかり。
「これは叔父が集めた珍しい本ばかりだそうだよ」
「わっ、ハク。」
後ろにハクが立っていた。
「まゆはこういうの、読むのか?」
「読まない読まない。ただ、古そうな本ばかりだなーって」
「叔父が世界中で集めてきた本なんだよ」
「へえ〜」
「ほら、軽いが朝食できたからこっちへおいで。」
「うん」
差し出されたハクの手を握り、立ち上がる。