山崎さんとなら、きっと楽しい毎日を送れると思う。
気持ちの面でも、現実的な面でも。
休日は買い物に行ったり、旅行に行ったり。
くだらないことで笑いあって、苦しいことがあれば相談しあって。
日々のお金に困ることもなくなるだろう。
瞳が潤み、涙があふれ出した。
モーターは低く唸りながら回転し、空気を切り裂く。
私たちを置いてきぼりにした車両はスピードを上げ、
破片となった風が私たちを包み込むと同時に、奥行きを解放させた。
目の前で私を閉じ込めているのは、高校時代のキミだった。
向かい側のホームに視線を移すと、私に悲しい顔を向ける今のキミがいた。
「中野ちゃん?」
名前を呼ばれたため、私は我にかえった。
私は何を見ていたんだろう。
目の前にいるのは山崎さんだし、ホームの先にはサラリーマンしかいないのに。
「……さい」
「え?」
「ごめんなさい」
「ううん。こっちこそ急にごめん。ゆっくり考えてくれればいいから」
優しい声が降ってくる。
でも、涙で山崎さんが見えない。
キミの姿は確かなものだったのに。