手紙の内容は、以下の通りだった。

『拝啓 引きこもり魔法遣い様
    苦労の耐えない駄狐様
 本日はお日柄もよく、ご機嫌麗しいと存じております。
 さて、この度御二方は誠に幸運なことに

『海沿いの彼方 伽儖堂』

 私がオーナーを務めるアパートの管理人に就任する権利に当選いたしました。
 つきましては(略)』

 非常に強気で厚顔不遜な態度の文面が続いていた。
 だが、要約すると簡単だ。

 アパート『伽儖堂』の管理人になれる、とのことだった。
「面倒だ」
 知人の手紙だ。この手の内容に嘘がないことも、彼は十分知っている。
 それだけに行く気がしない。
 これは罠だと訴えている。
「こんなもの辞退に決まっているだろ」
 と、権利書を破こうとしたところで、もう一枚の便箋が手元に飛び込んだ。
 畏まった(装った)文面ではなく、友人に向けた親しみやすい形で。