ごごごごご、と低い地鳴り音。それが動いているということが、いやでもわかる。
 よく見てて、と利沙が後ろに回る。
「手順は簡単」
 魔法遣いが教鞭を振る。

「まず生肉を召喚します」
 いきなり簡単ではない。
「続いて、真上の投入口にたたき込みます」
 梯子を使って登ったのか。どぼどぼと肉塊が転がっていく。
 ――ぎゅごぎゅごぎゅごぎゅご
 ――じゃりじゃりじゃりじゃり
 ――ひごごごごごごごごごごご
 これは調理といえるのか?
 凄惨な解体工場に思えて仕方ないのだが。
 頭のカバーやネジが何本も飛び出し、接合部分から煙が吹き、ランプが赤と緑に点滅している。
 色々な意味でやばいって。

 ――ちーん。

 奇怪な現象がすべて止まる。強制停止が掛かったのか。それとも
『完成でーす!』
 ……終わった。
 どこまでも元気な二人と違い、深く溜め息を吐いた。
 裏にまわって何か取ってくる。
「なにこれ」
 それを目にして、言葉がない。

 問 なにこれ

 解 挽き肉



 つまり、あれだ。
 仕事がどうしても終わらないのは、つまるところ。
「貴様らが原因か」
 ――ちゃき。
「ちょっ、暴力反対!」
「そうだよ。これを作ろうって言いだしたの管理人さんだし」
「素晴らしき責任転嫁!」

 弁明があるなら聞いてあげる。
 愛器ディバインクラッシャーをチャージして待つ。
「振り回す準備は万全ですね☆」
 きらり、と歯を光らせる。
 まだ余裕そうだ。
「おけ。わかったぜ子狐ちゃん」
 そのまま親指を突きだして。

「楽しかっただろ?」



「ええ、そうね」
 皮肉にも、その通りだった。

「だけどこれとアンタらはぶっ飛ばす!!!」

『NooOoOOoOooOO!!?!??!』



 このとき、
 わたしは珍しく
 笑っていたそうだ





End