二メートル弱の高さから繰り出された飛び膝蹴り。
 小さな体躯でも、弾丸スピードから繰り出す一撃は並大抵ではない。

 それを、
 彼女は片手で受け止めた。

『ナイス、エルデさん!』
「それほどでもあります」
 りすを受け止めた姿勢のまま、涼しい顔でエーデル・ヴァイスは言い切った。
 空中制止、という世にも奇怪な体験をしている彼女を放置して、カイトたちは悠々と老婆のエスコートした。

「てめえこのでこっぱち! あたいの邪魔するとは何事だあ!」
 エルデは長い髪の毛を上げている。
 彼女の琥珀色の目に髪が入るから、という理由だ。決して額が広いわけじゃない。
「警察沙汰になる前に止めたのです。むしろナイスファインプレーかと」
『ナイスファインプレー!』
 荘の内と外から拍手喝采。

 だが、それが面白くないのかりすは。
「けっ。時代遅れのポンコツが! 次にゼンマイが切れた時には覚悟しな! その長髪はヅラだってことを証明してやんよ!」
 …禁句ワードを連発した。

 ――ずごごごごごごごごごご

 効果音が恐い。
 腰まで届くエメラルドの髪が怒りに震えていた!
「やっちゃっても?」
 やっちゃえやっちゃえ、と友貴はノリノリだ。
 あちゃー、とカイトは南無と合掌した。
 予想通りというべきか、さらなる第三者が死刑宣告。

「許す。やりなさい!」
「イエスドクター」

 ぷしゅー。
 体の間接各部から煙が上がる。
「ちょっ。あつっ」
「セット:スクリュードライバー!」

 支えていた膝が放り出される。

「エリアルコンボって、俺はじめて見たよ」
「現実では普通、お目にかかれねえよな」