「昔はそんなの全然興味なさそうだったのに」

「中学の時、先輩がやってるの見て影響されてさ。今じゃもうこいつのトリコ」


虜って、そんなに好きになっちゃったんだ。

当然だけど、離れてる間の柳のことは何も知らないんだよなぁ……。


電車がやって来て、冷たい風があたし達に容赦なく吹き付ける。

どこか寂しいような、複雑な気分になった。どうしてなのかはわからないけれど。


それに、今の柳はすごくいいカオをしてる。

毎日が充実している感じが滲み出ていて、それがすごく羨ましい。


「……柳はいいね。好きなことを思う存分やれてさ」


思いのほか嫌味っぽい口調になってしまったあたしを、彼が少し怪訝そうに見やる。


あたしは昔から、英才教育をしたがった両親のおかげで、特に興味もない英会話やピアノを習わされていた。

習い事をするより、友達と公園で走り回る方が好きだったのに。

でも、あたしが頑張ると両親は褒めてくれたし嬉しそうにしていたから、言われるがままにやっていたんだ。