俺がひよりと初めて逢った時のこと

……そんなの覚えてねーなぁ。


気が付いたら一緒にいて、ケンカしてもいつの間にか仲直りしてて、

知らない間に、アイツが俺の中に確固たる居場所を陣取っていたんだ。


怒ると餅みたいにぷーって膨れるのが可愛かったから、俺は意地悪なことばかりしていた。

楽しい時心から笑うアイツといると自分まで元気になれたし、泣いている時は手を繋いでやろうと思った。

好きとか嫌いとか関係なく、ただ一緒にいたかったんだ。


集金袋の事件があった時も、ひより達の関係が悪くなるんじゃないかと考えて自分が悪者になった。

本当のことを言わなかったのは、藤沢をかばっていたことで、彼女と親しい仲なんじゃないかと誤解されたくなかったせいでもある。


正直何やってんだーって思ったけど、まだ幼かった俺はあんな方法しか思い付かなくて。

それが原因でひよりが去っていったことも、アイツが決めたことなら仕方ないと思っていた。


それなのに。

ひよりとぱったり会わなくなってから、後悔と寂しさしか感じなくなっていて。

それを埋めるように、ちょうどその頃出逢ったギターにのめり込んでいた。


いつからだったんだろう──アイツが、俺のちっぽけな世界を揺るがす、とてつもなく大きな存在になっていたのは。