「フライヤーって……」

『ビラみたいなやつだよ、ハガキサイズくらいのでさ。ライブの日時入れて、いい感じのやつ描いてよ』

「無理!!」


思わず速答してしまった。

それってたくさんの人に配るわけでしょ?

絵を描くのは好きだけど、たいした技量があるわけじゃないのにそんな重要な仕事出来ないよ!

恥をさらしてるようなものだし……。


『何で無理なんだよ』

「だって、あたしなんかのイラストで皆のこと宣伝するなんて、そんな責任重大なこと……!」

『へー、お前はまだ逃げんのか』


冷めた声が聞こえてきて、お風呂で温まった身体も急激に冷やされていく。


『そんなんじゃ、好きなこと仕事にするなんて絶対無理だな』


突き放すような一言が、あたしの胸にチクリと刺さった。

でも、不思議と痛くはない。目を覚まさせてくれたような、はっとする感覚。


『お前が今どんな絵描いてるのかわかんねーけどさ。少なくとも俺は、ひよりが一生懸命描いたやつなら、否定したりバカにしたりなんかしねぇよ。絶対』


柳のまっすぐな言葉が、冷めた頭と身体を、再び温かく包み込んでくれた気がした。