“あのコ”

と言ったら一人しかいない。もちろんリカだ。

今日の集まりにも一応誘ったのだけど、『行けるわけないでしょ』と冷たくあしらわれた。

でも、その顔はちょっと寂しそうだったし、柳に会うことに気まずさを感じなくなったら、また一緒に来てほしいとあたしは思ってるんだけど。


で、そのリカが来てないから荒れてるってことは……。


「え、サブさん、リカに会いたかったの?」


何気なく思ったことを言うと、無表情なままのサブさんの耳がぽっと赤くなった。


「だっははは!! やっぱりお前、リカちゃんのこと好き──」

「黙れハゲ」


爆笑する涼平くんの脇腹にスティックを突き刺し、サブさんは頭まで赤くしてドラムセットに向き直る。

その様子を見ていたあたしと亜美は目を合わせて、思わず口を両手で覆って小さく叫んだ。


うそーうそー!!

まさかサブさんがリカのことを気に入ってたなんて!!


興奮気味に手を握り合うあたし達に、「俺ハゲてねーし……!」と言いながら脇腹を押さえて悶絶する涼平くん、それを介抱(?)する相模くん。


「……なんか楽しそうだね」


ちょうど戻ってきてスタジオのドアを開けた柳は、あたし達の様子にぽかんとしながら呟いた。