「昔から本当にいい子だったんだ。秋史くんになら、ひよりを嫁にやってもいいんだがな」

「……はぁ!?」


ヨメぇ~~!?

何言っちゃってるの、お父さんは。もう酔ってる?


「昔ひよりも言ってたじゃないか、『秋ちゃんと結婚するー!』って」

「そうだっけ……」

「なんならその時のビデオでも見るか? 可愛いぞ~あの頃のひよりも」


デレデレしてる上機嫌なお父さんを、呆れながら目を細めて見るあたし。

言ってたのかもしれないけど、そんな小さい頃の発言なんて何の効力もないってば。

第一、今はちゃんと本当に好きな人がいるんだし……。


自然と柳の姿が脳内で再生されると、心臓の動きが早まるのを感じる。


「ひよちゃん、なんか赤くなってるよ?」

「えっ」

「あらあら、秋史くんのこと意識しちゃったのかしら?」


ニンマリと同じ顔で笑うあたし以外の三人。


「違うから!!」

「まあまあ、照れるな照れるな」


あー誤解されてる……でもその相手が、本当は柳だなんて言えるはずもない。

勝手に色めき立つ皆はもう放っておくことにして、あたしは黙々と箸を進めるのだった。