私は携帯を美紅に向けると「始めるよ」と言った。

美紅はピースした手を天井に向けながら「いいよー」と言った。



「それじゃあ...よーい、スタート!!」



美紅は真っ直ぐ歩いていく。
しかし、少し右にずれてしまった。
ずれた後も真っ直ぐに歩き続ける。



美紅を映す携帯を見ながら、私は察する。



あぁもうこれ、完全に私の負けだ。
決定事項だ。



半分ぼーっとしながら動画を撮っていると「彩花ー?」と向こうで声がした。



私ははっとして携帯から目を外す。
すると、向こうから優奈と美紅が手を振りながら歩いてくるのが見えた。



「動画、撮った意味なかったね」



少し声を大きくして話す。




「うんー。罰ゲームは彩花に決定かな」


優奈が笑いながら言った。



私は携帯を制服のポケットにしまい、目の前にやってきた2人に聞いた。



「罰ゲーム、どうするの?」

「んー、どうしよう?」



優奈は美紅の顔を見る。
美紅はしばらく考え込んだあと「告白、とかは?」と呟いた。



...告白??

待って。
告白って誰にするの?



「誰にする?」



優奈と美紅は楽しそうに相手を決めている。



「あっ」




美紅がどでかい声をあげたので、私はびっくりして美紅を見る。




「あの人はどう?」

「あの人?」




「小野柊也」




小野...柊也。

小野...




「は、小野!?」

私は2人の顔を見る。



ニヤッと笑った2人を見て悪寒が走る。



「頑張ってね、彩花!!」


その笑顔を見て、私は絶望した。